4月22日
最終更新: 4月24日
このクールではPRERUNNEたる重要なセクション:ロングトラベルサスペンションについてお話をしていこうと思います。
これはあくまで私見ですがPRERUNNERを大きく分けると3つのジャンルが存在します。
と使用目的や本気度?の違いによってスペックやコストの違いが出てきます。
レース向けに関してはデザートレースのチームがコースの下見に使用する本来の意味でのプレランナー、フリーク向けはレース走行の様な走りをデザートで本気で楽しむエンスージアストが乗るプレランナー、ストリート向けは軽くデザートを走れるスペックでレジャーユース目的の日常使いが出来るプレランナーという感じでしょうか。
アメリカのオフロードのイベントに行くと下の様なプレランナーが停まっています。これがストリートプレランナーという感じです。
こちらがストリートプレランナー乗りが目指すショップやメーカーのプロダクションデモカーと呼ばれるプレランナーです。
ここからはビルダーズカスタムの逸品でフリーク向けやコンペティション向けのスーパープレランナーです。作り込みやスペックも市販車ベースを超えたラグジュアリープレランナーと言えるレベルのプレランナーで憧れのスーパーカーみたいなスタンスです。
この手のプレランナーは今の相場では2000万にほど近いプライスレンジだと思われます。こんなの日本で乗れたら最高ですね。
それでは本題に入りましょう。
PRERUNNERの最大の特徴でもあるロングトラベルサスペンションですが様々なスタイルやスペックがあって本物と言われるレーススペックのモノからストリートスペックのモノまでラインナップしています。既知の方もいるとは思いますがロングトラベルの定義について触れていきましょう。
ロングトラベルとはサスペンションのストローク量を表しておりホイールのハブセンターの上下動する動作幅が大きいことを意味します。その作用はダブルウィッシュボーンであれば
アッパーアーム+ナックル+ロワーアームの可動域によるものでアームが長くなればなるほどハブの上下可動域が大きくなるというものです。
(a)はタイヤが接地していて車重が乗った状態を"1G"
(b)は車体をジャッキアップしてアームが下に伸びてタイヤが浮いた状態を"ドループ"
(c)はスプリングが一番縮みきった状態を"バンプ"または"ボトム"
という表現をよく使うので覚えておきましょう。
上の図のようにハブセンターの上下の運動量を"トラベル量"表現します。
ロングトラベルと呼称されるのはこの事を指しています。
次にトラベル量を増やすにはどうするかという話に触れたいと思います。
構造的な話をするのであればダブルウィッシュボーンタイプ(Aアーム)のサスペンション
が主流なのですが単純にアームを延長するという手段になります。
皆さんもよく見た事のある延長されたアッパーアームとロワーアームを装着する手法になります。下の写真はGMCシエラのレーススタイルのLT(ロングトラベル)キットになります。これはレースキットと呼ばれるアッパーアームの内側にコイルオーバーショック(プライマリー)とバイパスショック(セカンダリー)が収まるタイプの事を指しています。
アッパーアームとナックルのジョイント部にも注目しましょう。
こちらがプレランナースタイルと呼ばれるもので下の写真のタコマの様にアッパーアーム内にはプライマリーショックのみで、セカンダリーショックはアームの外に装着するタイプになります。アッパーアームとナックルのジョイント方式がレースキットと異なる事がわかります。これはレースキットとプレランナーキットのトラベル量の違いを表しています。
ショック自体のトラベル量がレースキットの方が多くなるためフルドループ時のアッパーとナックルのジョイント部(ユニボール)の角度限界を考慮した設計となります。レースキットの方はアームの上下動がフリーになる事がお分かりいただけるでしょうか。
アームの長さについてはショックのストローク量にも密接な関係があってショックのマウントする位置やアームのマウントする位置関係においてもトラベル量が変化します。
我々が乗っている市販化されているラダーフレームタイプのトラックはアームのマウント位置がフレーム幅に合わせる事になります。それはエンジンや補器類等がフレームの真ん中に鎮座しているからですね。下の写真の様に左右のアームの付け根(ピボット)位置はフレームの幅の分だけ広がっているのが下の写真で分かります。
トラベル量を確保するための究極が方法とも言えるのが下の様なセンターピボットと言われる構造です。下の写真はパイプフレームなのでバルクヘッドの設計に合わせてレースレギュレーションの寸法内のトレッド幅で収まるアーム長に設計されています。このためエンジンはミッドシップ化されておりクーリングシステムは全てキャビン背面へリロケーションされています。とにかくサスペンションの運動量を稼ぐ目的で作られた究極のマシンというわけです。
この様にアームが延長される事によってタイヤが外にはみ出すことになり、タイヤの上下動も大きくなる事からファイバーフェンダーを装着するという対策が必要になるというところに繋がります。
ロングトラベルキットに記載されている車幅の増加値とホイールのバックスペース(オフセット)とタイヤ幅のバランスを見ながら装着するファイバーフェンダーのサイズを決める事になります。上の2台はワンピースカウルなので6"per/wide なので片側で15.24cmですから左右合わせると全幅が約30cm程広くなるという事です。フルサイズだと幅が230cm超えになるという事ですね。
次回は我々にも馴染みが深いストリートプレランナーについてです。