SHOCK SERVICE
- APTCO HQ
- 7 分前
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今回は運転中にリアのショックに違和感があるという事でメンテナンスとシム調整の作業事例をご紹介します。
今回のショックはいつも見慣れたOEMショックとは異なるKINGのPERFORMANCE RACEシリーズ2.5x16のバイパスショックです。最大ショック長は約107cmでストローク量は40cmというロングトラベルサスペンション向けのショックになります。下の写真を見ればその長さがお分かり頂けるでしょう。

バイパスショックを日本で見た事がある人も少ないかとは思いますがロングトラベルサスペンションにおいてはフロントのセカンダリーショックやリアリーフリジットのプライマリー、リアリンクのセカンダリーに採用される事が多いショックです。下の写真は左と中央がリア用、右がフロント用です。ショックの長さの違いが良く分かるかと思います。

今回の作業の目的は乗り心地が非常に硬いのでもう少ししなやかに動く様にしたいというリクエストなのでまずはバイパスチューブの流量を調整してみます。オイルのバイパス量を増やした状態でショックを縮めてみたのですがめちゃくちゃ硬いというか途中でシャフトがロックしてしまった…なんとかショックを縮めた後のリバウンドもシャフトがロックしていて全然伸びて来ない。ガス抜けの症状かと思いましまがガス圧は150psi入っています。シャフトが動かなくなるのは異常な事なのでシールピストンに異常があるか、ショックの内圧異常なのかバラしてみないと分かりません。
内部の状況を見るべくショックをバラしていきます。まずはワイパーキャップを外してシールキャップを見てみるとメインシールリテーナーがきちんとはまっておらずメインシールが外れかかっていました。そう言えばワイパーキャップの巻きが少ない印象でした。

もうひとつ気になったのは下の写真の金属の切削ゴミです。組み付け工程で混入したものなのかが気になりました。

これが原因?という訳ではないでしょうが本来あってはならないモノなのでシリンダーやオイル経路はしっかりと洗浄してエアブローをしておきました。
ワイパーキャップとシールキャップはショックシリンダー末端で締結されるのでピストンの様にシリンダー内を上下することは構造的にありません。この金属ゴミはどこから混入したのか気になるところです。

ピストンウェアバンドが金属性なのでもしかしたらバリがあってシリンダーの内壁を削ってしまったのかも知れません。仮組をしてガス圧をかけてショックの動作確認を4回ほど繰り返し行ってスムースにピストンが動くように調整をしました。

ちょっと珍しいのでご紹介します。ショックシャフトをシリンダーから抜き出してみると長さのあるシャフトスペーサーが着いています。Foxとかだとここがバンプスプリングになっていたりします。シムを計測したらオリジナルで15C/12R でした。これを機に今回は独自のカスタムスタッキングを行い80km前後の高速グラベル走行向けのセッティングにしてみました。

ベースとなるシム調整が終わったら細かな微調整は実際に走ってみてドライバーの好みに合わせてバイパスチューブによる調整となります。
今更ですが、そもそもバイパスショックってどんな仕組みなのか?興味を持った皆さんにバイパスショックのショックワークについて簡単にご説明をしたいと思います。通常はプライマリーショックの1本のみが一般的ですがパフォーマンスショックのシリンダーが2.0から2.5、3.0に太くなるのはピストンの大径化とオイルの油量やストローク量の増加は減衰力の効果に比例します。
プライマリーショックでは補えない入力が続く路面のオフロードを高速で走るにはオイルの油温上昇による不具合が発生する原因に繋がります。それを補佐するのがセカンダリーショックでもう1本で減衰力を補うのとストロークスピードを調整する事が可能になります。バイパスショックはショックシリンダーのバイパスゾーンにショックピストンがあるとそこでは減衰力(オイルの流量抵抗)がバイパスされるという仕組みです。ショックの機能は下のイラストをご参照ください。

バイパスチューブの設けられたゾーンではピストンの稼働時にオイルがバイパスチューブをされてピストンの動きがスムーズに上下動します。セカンダリーショックとしては減衰力を調整するための衝撃干渉装置と言っても過言ではありません。自分の好みでセッティングが可能です。

バイパス量は無段階調整で出来るのでHEXとレンチがあればどこでも調整が可能です。
バイパスショックが入っている人は調整やOHを含めてご相談ください。
今回はメインシールを交換してリテイナーリングもきちんと装着しました。

という事で今回の作業は最後にガス圧を規定値に入れて試走して異常もなく本来のショックワークに戻ったのでこれで終了です。セッティングは自分の好みにしておきました。
皆さんもバイパス調整をして理想のセッティングにトライしてみてはいかがでしょうか。