LONG TRAVEL SUSPENSION #01
- APTCO HQ
- 6月8日
- 読了時間: 6分
2nd Gen TACOMA PRERUNNER RWD に DIRT KINGのロングトラベルサスペンションをインストールしたので作業工程を含めてパーツのご紹介をしたいと思います。

今回はミッドトラベルからのグレードアップということでDIRT KINGとFOXのセットアップでロングトラベル化する内容になっています。
下の写真が入庫時の状態です。TOTAL CHAOSのUCAとFAB-SPINDLEにOEMのFOX2.5C/Oのセットアップになっています。当時はUCAとリフトスピンドルのセットで「ミッドトラベル」と呼称していました。今でこそSTOCK WIDTHのロワーアームがラインナップしていますが、この当時はRWD(2WD)専用のリフトスピンドルがラインナップしていました。4WDはCVアクスルがあるため構造上リフトスピンドルというものが存在しないため現在の様に駆動方式関係なくロワーアームとアッパーアームのセットでミッドトラベルと呼ぶようになりました。FOXのステッカーが時代を感じさせますね。15年くらい前のビンテージFOXです。当時はロングトラベルは高嶺の花の存在だったので最初はミッドトラベルを良く取り付けた記憶が蘇ります。

FOXのコイルオーバーショックに関しても当時はOEMとRACEの2種類しかありませんでした。今では3カテゴリーに分かれておりその中でもグレードが存在するくらいオフロードサスペンションのメーカーとしては大企業と言う位置付けです。FOXは車だけじゃ無いですからね。今回の様にLT(ロングトラベル)サスペンションには専用のコイルオーバーショックをチョイスします。今でこそLTでも車種専用が選択出来る時代になりましたが数年前までは
ショックはサスペンションのストローク量や寸法を計測してカスタムオーダーするのが普通でした。前回のBLOGにもあった様にコイルオーバーのマウントブラケットは基本自作が普通だったので今でこそイージーボルトオンの便利な時代になったという訳です。

今回のショックはFOXのFACTORYシリーズというレース仕様のカテゴリーになるためプリロードの調整を行なって車高の調整を行う必要があります。FOXのコイルスプリングはEIBACHなのでIDを見るとFR16インチ、ID3インチ、CR600LBSという種類のスプリングが採用されている事が分かります。

D IRTKINGのLTにインストールするに際してどの程度のプリロードをかけておくのかはショップノウレッジなので秘匿しますが過去のデータやパーツ内容、希望のスタンス等からベースセッティングを施します。昔はプリロードリングとスライダーロックリングのWリングだったのがカレントモデルはプリロードリングだけになりましたね。KINGもFOXもSST(専用工具)を買い揃える必要があるのでショックサービスをするにも結構費用がかかります。

FR 16に対してプリロードをかけたら車体に実装してみてジャッキオフした状態で車高の寸法を計測します。この際は必ずショックにN2ガスを規定値入れておく必要があります。
ショックのガス圧は200PSI充填すると車高が1インチ近く上がる場合がありますのでガス圧のチェックと充填を忘れてはいけません。またEIBACHスプリングは馴染むと1インチ程度車高が下がるのでそれも計算して車高調整を行うと良いでしょう。もっと細かいことを言えば装着するホイールのリム幅やオフセットによってもレバー比による車高変動があるため結構緻密な計算が必要になります。
LTはそもそも車高を上げるためのドレスアップパーツではなく、本来は足をどれだけ動かせるかというパフォーマンスパーツです。車高、1Gサグ、バンプ&ドゥループにおいて適切かつ使用用途や走行環境に合わせた調整が必要になります。単なる見た目で満足するだけではなく、機能美を備えたチューンナブルなパフォーマンスパーツですから是非ポテンシャルを最大限に引き出して頂けると宜しいかと思います。
次にDIRTKINGのLTを車体に組み付ける前に色々と下準備が必要になります。
コンポーネンツについてはUCA、LCA、リミットストラップ、ブレーキライン、タイロッドエクステンドチューブという構成になります。リミットストラップの車体側マウントはフレームに溶接加工をして装着が必要になります。またFOXやKINGのリザーブタンクマウントは別途購入するか自作でブラケットを取り付ける必要があります。

UCAとLCAついてはとても重要な事がありまして付属のグリースフィッティングをそれぞれピボットブッシングチューブに取付を行ってから必ずグリースガンでグリースを充填してください。

このピボットブッシングに使うグリースは理想的には付属している乳白色のちょうど3号レベルの粘性の高いものが良いのですがAPTCOではWAKOSのハイマルチ/ちょうど2号を昔から採用していますが15年前のPRERUNNERでも定期補充さえしていれば特に問題なく使用出来ています。WAKOSのグリースは他社製に比べて高温下や高荷重下でも液状化しづらい事を実験で拝見してからピボットブッシュのウレタンやデルリン等のブッシングにはこのグリースを使用しています。

もしグリースを充填中にブッシュが飛び出してきた場合には一度フィッティングを外してからプラスチックハンマーで軽くブッシュを叩き込んで元の位置に戻すと余分なグリースがフィッティング穴から溢れ出すので綺麗に拭き取ってからフィッティングを戻して軽く再充填してあげると良いかと思います。ブッシュがはみ出てると車体に装着する時に苦労するので。
グリースアップが終わったらキングピンのプレフィットを行います。DIRTKINGはUCAもLCAもFKのWSSX16Tという1インチユニボールを採用していて(TCも同じ)付属のミスアライメントアダプターを挿入してボルトナットでスピンドルと締結をします。ミスアライメントはSUS(ステンレス)の削り出しなので寸法がビタビタな事が多くすんなり入らない事もあるので潤滑油やプラハンで優しく圧入してください。

アームの下ごしらえが終わったらいよいよインストールです。LTを装着する場合は基本的に車体の足回りはこんな感じでストリップされます。残っているのはブレーキキャリパーとステアリングラックのシャフト、バンプストップくらいです。これだけごっそりと足回りのパーツを交換します。これは2WDなので楽な方ですが4WDとなるとCVアクスルをデフケースから引き抜いてオイルが漏れて、CVアクスル分解してシャフト入れ替えてとメチャクチャ手間が増えます。トヨタは特に面倒臭いんですよね。FORDやシボレーを見習ってほしい。
CVの分解はこちらを参照ください。https://www.aptco.info/post/uniball-replace

トヨタと言えばUCAのボルトがインナーパネルに干渉して抜けないという問題がありますね。これはお約束なので切る削る叩くで対応します。TACOMA、FJ、TUNDRA、SQUOIA、HILUX、SURF、LC150、LC200はいつもストレスをどうもありがとう。

しかしトヨタは大きく変わりました。
以前にもLC250の事を絶賛しましたが https://www.aptco.info/post/lc250-mods-finished
その理由の1つがまさにこちらです。ご覧下さい、赤い矢印がUCAのボルトです。インナーパネルには全く干渉せずにすんなりボルトが抜けてくれます。あーなんて優しい世界なのだろう。その他にも整備性が改善された点は多々ありましたしLC250にはトヨタの本気を見出すことが出来ました。それくらい良い車だと思います。ただし価格設定と日本のエンジンラインナップは別とします。

最後に話がずれましたが今回はストレスフリーな2WDの作業でCV分解が無いだけでも本当に良かったです。LT用のエクステンドシャフトに換装する作業を経験した事がある人なら
絶対に分かってくれると思います。
ということで今回はここまで
次回はLTを取り付けていきます。